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東日本大震災の被災地では、10日も膨大ながれきの撤去作業が続いた。漁港や農地の被害は甚大で、再生への一歩を踏み出しかねる生産者もいる。商工団体は地場企業の被災状況を把握しきれていない。一部の工場では操業再開の動きも出てきた。震災から1カ月となる11日を前に、生活再建と産業復興は緒に就いたばかりだ。
復興に向けてがれきの撤去が課題となっている。県は倒壊家屋の数からがれきの量を約380万トンと推計し、年度内に仮置き場に移したうえで、3〜5年で処理する。がれき処理は本来、市町村の仕事だが、県が肩代わりする方針を示している。沿岸の被災12市町村のうち、既に陸前高田市や大槌町など6市町村は県に代行を要請した。残り6市町村はまだ要望を出していないか自力で処理する。
だが、資源循環推進課によると、がれき量は復興事業の本格化に伴い増える。公有地では仮設住宅の建設が優先されるため、仮置き場も不足が見込まれる。さらに1カ月前後も汚泥につかっているため、分別しても再利用可能かどうかは不明で、最終処分場の確保も霧の中だ。吉田篤総括課長は「やってみなければ分からない。早く取り組みたい」と繰り返す。
山田町が用意した仮置き場は5ヘクタール。既に半分が埋まり、次の用地を探さなければならない。車を含め財産扱いされるものの処分には、被災者の意思確認が必要で、担当者は「まだ行方不明者の捜索作業に伴う撤去の段階で、今後どれだけの量になるか想像もつかない」と頭を抱える。
仮設住宅の建設は沿岸11市町村から要望が出され、計1万8000戸の建設を予定する。これまでに10市町村で計2500戸が着工され、4月中に1000戸が完成する見込みだ。県は全戸の完成時期を明かしていないが、「9月までにはと聞いている」という市町村もある。
1万8000戸のうち、用地確保にめどがついたのは1万2000戸にとどまる。高台で、地域のまとまりに配慮して1カ所に少なくも10戸以上といった条件があるためだ。電気メーターや浄化槽など関連資材も不足し、県は国に調達支援を求めている。
一方で入居世帯が建設戸数より減る可能性も出ている。1万8000戸は市町村が倒壊家屋数などから予測した需要を積み上げた数字だが、約4000戸と見込む陸前高田市では、入居申し込みは約1800戸しかない。希望調査を進めている釜石市は約5000戸の計画に対し、実際の入居は3000戸前後と見込む。担当者は「今は親せきや友人の家にいる人もおり、入居希望者も変動すると思う。締め切りを設けずに募集する」と説明している。【清藤天】
◇製造業、一部工場再開も
沿岸部では、漁業が壊滅的な打撃を受けたほか、地場企業も操業中止に追い込まれるなど、東日本大震災は県内産業に大きなダメージをもたらした。一方で震災から1カ月がたち、再開に向けた動きも徐々に出てきた。
県によると、県内24漁協のうち14漁協の事務所が津波で流失した。漁港関係では、111漁港のうち105漁港で防波堤の倒壊など甚大な被害が出た。漁船は県内で約1万4300隻が操業していたが、現在は1漁協あたり20隻程度だという。このため各漁協では漁船の共同運営を模索する動きも出ている。
商工業では、沿岸部の商工団体が被災するなどしているため、被害状況の把握が困難な状況だ。県商工会連合会の千葉庄悦会長は「(加盟企業の)6割は被災した。大槌、山田町では9割を超える」と話した。
一方、土産菓子「かもめの玉子」を製造する大船渡市の「さいとう製菓」は7日、一部の製造ラインを再稼働させた。また、金ケ崎町にある関東自動車工業岩手工場は部品の調達難から操業を休止していたが、親会社のトヨタ自動車は18日からの再開を発表している。【湯浅聖一】
◇水田、残る津波の痕跡
小舟や漁具、住宅のがれき……。高さ約8メートルの防潮堤から300メートルほど離れた「水田」には、いまだに津波の痕跡が残る。野田村野田の通称・長地地区。鹿糠沢(かぬかざわ)津嘉(つよし)さん(49)の水田だ。7ヘクタールのうち飼料用米を栽培していた約3ヘクタールが津波で冠水し、「どう手をつけていいのやら」とため息をついた。
3年前、「耕作面積を広げれば採算は合う」と渋る父吉太郎さん(74)を説得し、建築資材会社を辞めて専業農家になった。低コストの新技術を学び始めたばかりの震災だった。被災した水田で耕作できなければ、売り上げは4割減る見通しだ。コンバインのローンも約450万円残る。
農林水産省の推計によると、県内では水田1172ヘクタール、畑666ヘクタールが流失・冠水した。県は作付け可能な農地を特定するため、野田村を皮切りに土壌の抽出調査を始めた。
農地94ヘクタールが被災した野田村では、県久慈農業改良普及センターが4〜7日、約120地点を調査した。このうち鹿糠沢さんの水田など9割は塩害で作付け困難と判定された。作付け前に被害を受けたため、国の戸別所得補償や農業共済制度の対象にならない。
鹿糠沢さんは農業を続けるつもりだが、不安は大きい。「国や県は早く復興の道筋を示してほしい」。農家の生活再建はまだ見えてこない。【山口圭一】
4月11日朝刊
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